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第5回:「邦楽の味わい」

第5回:「邦楽の味わい」

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歌舞伎の上演中に絶え間なく聴こえるもの---それは邦楽の調べです。開幕と同時に唄が聴こえ音楽が演奏され、台詞のやりとりの間にも三味線音楽が流れる歌舞伎は、ミュージカルの一種と呼べるのかもしれません。

数ある邦楽の種類の中でも、歌舞伎舞踊で最も多く登場するのは、「長唄」と呼ばれるものです。大勢の唄い手さんの他、三味線や大小の鼓や笛、そして太鼓の演奏者さん方がずらりと並ぶ姿は圧巻と、ご記憶の方もいらっしゃるでしょう。長唄以外には、義太夫、清元、常磐津も頻繁に登場し、唄と三味線で踊りやお芝居を盛りたてます。時には複数の音楽が舞台上に共存し、交代に演奏します。「掛け合い」と呼ばれる、贅沢な演出です。

他にも、黒御簾(くろみす)と呼ばれる舞台下手(しもて:客席から舞台を見て左側)の一角にはお囃子(はやし)方と呼ばれる奏者さん唄い手さん達が控えていて、ある時はしっとりと、またある時は豪快に音楽を奏で、お芝居の味わいを深めます。現代の技術を考えれば、テープに撮った音を流せば手間が省けるのでしょうが、生音の使用にこだわる歌舞伎は生で演奏いたします。

ここで皆様には、清元節をお聴き頂きます。江戸浄瑠璃の一種である清元節は、高音で語る(浄瑠璃は「唄う」ではなく「語る」と言います)部分が多く、軽妙・洒脱な音楽と知られています。「中棹(ちゅうざお)」と呼ばれる三味線の響きは奥深く変化に富んでいて、語りの魅力を存分に引き出してくれます。

この記事の上下に設置の「この記事を聴く」の表記をクリックして、清元の演奏をお楽しみください。曲名は「三社祭」でございます。

邦楽に距離感を抱いていらっしゃったとしたら、それはもったいない。劇場やテレビで歌舞伎をご覧になる際は、是非美しい邦楽の音色にも耳を傾けてみてくださいませ。

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