デジタル補聴器とは

デジタル補聴器の登場によって、補聴器の機能は飛躍的に進歩しました。ここでは、デジタル補聴器の具体的な特長と、デジタル化によって可能になった、最新の補聴器に搭載されたさまざまな機能について説明します。

デジタル補聴器の最大の特長

デジタル補聴器の最大の特長は「マルチチャンネル化した信号処理」にあります。簡単に仕組みを見てみましょう。
私たちの耳は同時にたくさんの音を聞いています。同時に聞こえる音をいくつかに分割(マルチチャンネル化)し、特定の種類や高さの音だけの大きさを調節できる(信号処理ができる)ようにすることが「マルチチャンネル化した信号処理」です。
この処理により、最新のデジタル補聴器では人間の音声以外の音(周囲の雑音や騒音)を大きくすることなく、聞き取りたい音声を優先して大きくするなどのさまざまな工夫ができるようになったのです。
それでは主にどのような機能がデジタル補聴器には備わっているのか見ていきましょう

騒音の中でも会話が明瞭に聞こえる

デジタル補聴器を代表する機能が、「ノイズリダクション機能です。デジタル補聴器は入って来た音をきめ細かく分析することで、音声と周囲の騒音を識別し、騒音を抑えて会話を聞き取りやすく強調するので、騒音の中でも会話が聞き取りやすくなります。補聴器のノイズリダクションには、細かく分けると以下の6つの機能があります。

1⃣ 定常雑音を低減する機能
エアコンの音やパソコンなどの機器のファンの音、一定速度で走行する乗り物の中で聞こえる走行音、人が大勢いる広い空間での雑踏音などは、音の大きさが時間的に変化しない一定の音に聞こえます。このような音を「定常雑音」といいます。定常雑音には、聞き取るべき情報はありませんので、補聴器はこれを低減します。

2⃣ 大きさが変化している音を低減する機能
大きさが変化している音を低減する機能
定常雑音以外の音は、大きさが変化している音になります。それらは、街の交通雑音、機械が作動している音、人が作業している音、そして人の声などです。
聞き取りを最優先するのは人の音声なので、補聴器はこれらの音の中から人の音声以外の音を低減します。正確には、その音の性質・挙動が人の音声の性質・挙動と明らかに一致しない音を人の音声以外の音と判断して低減します。

3⃣ 指向性機能
特定の方向からの音を優先して聴取するしくみを「指向性処理」と呼びますが、この目的もノイズリダクションのひとつに含まれます。補聴器が最優先したい音は人の音声ですが、音声にも聞き取りたい音声と、これを阻害する音声とがあります。大勢の中で会話をする場合に、話し相手の音声の聞き取りを、横や後ろの別の人たちの会話音が邪魔することがあります。このような状況の改善に有効なのが、前方からの音を最優先してそれ以外の方向からの音を低減する指向性処理の方法です。補聴器の指向性機能は、前方の音を優先的に増幅し、前方以外の音を減衰させることで、周りに会話や雑音があっても「一番聞きたい」正面の人の音声を優先的に聞き取りやすくします。
さらに、正面からの音声の聞き取りを阻害するような大きな音が周囲にある場合、その音の方向を特定して、その方向からの音を低減させます。この処理を連続的に動作させることで位置が移動している雑音も低減することができます。

4⃣ 内部雑音を低減する機能
静かな環境で会話もないような場面では、補聴器自体が発生する内部雑音や周囲の小さな雑音だけが聞こえます。特に、最近のデジタル補聴器は小さな音をより大きくする増幅処理をするので、静かな環境ほど増幅器の増幅度を高めるため、内部雑音や静かな雑音も高く増幅されて耳障りに感じることがあります。
これを防ぐために、一定レベル以上の音の入力がない時には補聴器の増幅度を下げる処理を行います。この結果、静かな環境においては補聴器は増幅を停止し、より静かになる効果があります。

5⃣ 衝撃音を低減する機能
補聴器を使い始めた難聴者が、どのような音を不快に感じるかを調査した結果では、ものを叩く音、壊れる音、泣き声、食器・紙を扱う音などの報告があります。これらの音を分析すると、瞬間的に立ち上がる音、すなわち衝撃音であることがわかります。補聴器は、この衝撃音による不快感を取り除くために、音の衝撃的な成分を抑制する処理を行います。これにより、補聴器の長時間装用による疲労を軽減し、より快適な装用をもたらすことができます。

6⃣ 風雑音を低減する機能
補聴器はさまざまな屋外環境でも使用されるので、風に当たった場合には風切り音も増幅してしまい、とても大きく不快な音になり、同時に必要な音の聞き取りの妨げにもなります。風雑音はその挙動の特徴が比較的明確なため、補聴器はその発生を確実に検知して、軽減処理をすることができます。

音質・音量をその場に合わせて自動調整できる

補聴器を使用している環境(主に周囲の騒音の状況)に合わせて、補聴器が自動的に音質や音量を調整してくれるので、周囲の環境が変わっても快適な聞こえを維持することができます。
私たちは毎日生活していく中で、一人で一日中同じ場所にいるということはまずありません。一日の中でも、静かな家の中にいる時、人ごみの中を歩く時、電車に乗る時など周りの環境はさまざまに変化しているはずです。また、職場で打合せをしたり、レストランで友人と食事をしたり、家で家族と話をしたりと、人と会話をする場合の周囲の環境もさまざまです。デジタル補聴器は、入って来た音をいくつかに分割(マルチチャンネル化)し、分割したチャンネルごとにきめ細かく分析・処理することで、言葉の聞き取りの妨げになる騒音を抑えながら、本来聞き取りたい音声を強調することができます。その分析・処理は周囲の環境を考慮しながら途切れることなく絶えず行われています。その環境の周囲の音の状況(静かな場所なのか、うるさい場所なのか)を判断しながら、その環境において最も快適な聞こえを提供してくれます。例えば、静かな家の中では、不必要に周囲の騒音を抑えないように働き、周囲がうるさい場所では、周囲の騒音をできるだけ抑えて、人の声を聞き取りやすくするような処理を行います。デジタル補聴器は、そうした処理を周囲の環境の変化に合わせて絶えず行って、その環境下でベストな聞こえを届けてくれます。

聞こえ方を一人ひとりに合わせることができる

デジタル補聴器は、使う人の聴力や聞こえの状態に合わせてきめ細かくフィッティング・調整をすることができます。また、そうして使う人の状態に合わせて調整することで初めて性能を最大限に発揮することが可能になります。購入する際はもちろん、購入後も繰り返し調整を重ねることで、補聴器は本当に使う人にぴったり合ったものになっています。また、購入した後で聴力や使用環境が変わっても、販売店で調整することが可能です。
デジタル補聴器の特長は、入ってきた音をいくつかに分割(マルチチャンネル化)し、分割したチャンネルごとにきめ細かく分析・処理できることです。調整も、使う人の聴力や聞こえの状態を細かく分析した上で行われます。調整はコンピュータを使用し、「どんな音が聞き取れていないのか」「どんなシーンで不自由を感じているのか」といった情報を把握した上で、「どの高さの音をどの程度増幅させると快適に聞こえるのか」、「どの高さの音は、増幅させすぎるとうるさく感じてしまうのか」という点などを考慮しながら、専用のソフトウェアで行われます。そのように導き出された補聴器の調整のデータは、コンピュータに記憶されるので、緻密な調整を繰り返していくことで、補聴器はより使用する人に合った快適な聞こえを提供できるようになります。

電話の時に起こりやすいピーピー音を抑える

電話や携帯電話での通話の時、また、補聴器を耳に入れる時や食事等で顎を大きく動かした時などに起こりやすい、ピーピー音(ハウリング)を抑えます。
ハウリングは、補聴器を使用する人にとって大きな悩みの一つでしたが、デジタル補聴器には、ハウリングの原因を自動的に抑える機能が内臓されていて、不快なピーピー音を軽減してくれるので快適です。

デジタル補聴器のさまざまな機能

デジタル補聴器は補聴器を大きく変えました。補聴器のデジタル化によって、何が可能になったのかということは、これまでに説明しました。しかし、デジタル補聴器もさらに進化を続けています。
最新のデジタル補聴器には、これまで説明したデジタル補聴器の特長をベースにしながら、さらに進化した多彩な機能が搭載され、それぞれのユーザーに合った快適な聞こえを提供しています。

語音強化・語音強調システム

話し声と騒音が混在しているような環境下で、騒音を抑えつつ話し声を強調するシステムです。個々のユーザーの聴力レベルや聴取環境の変化にも対応し、さまざまな環境下で明確に言葉を伝える機能です。

環境に適応した音声処理

日常生活において、補聴器ユーザーを取り巻く環境はさまざまに変化し、話をする相手もさまざまです。つまり、補聴器ユーザーを周囲の環境は日々目まぐるしく変化します。そうした音の大きさの変化に応じて適切な音声処理を行い、ひずみの少ないより自然な音を届ける機能です。突然大きな音が入って来た場合でも瞬時にコントロールして、不快にならないレベルに抑えるなど、周囲の環境の変化に応じて絶えず快適な聞こえを提供する機能です。

環境適応型指向性

周囲の環境に応じて、音を拾う範囲を自動的に調整する機能です。例えば、指向性機能を搭載した補聴器は、会話をしている時に背後に騒音がある場合には、背後からの音を減衰させて、正面からの話し相手の声を優先的に聞き取りやすくします。その指向性の機能をさらに進化させたものが環境適応型指向性で、騒音を出している音源が移動しても絶えずその騒音源を特定し続けて、騒音を抑制し続けることができます。例えば、背後を移動する車などの騒音源を追いかけて、その騒音源が発する騒音を抑制しながら、周囲の騒音の状況が変わっても、絶えず、正面の相手の言葉を聞き取りやすくしてくれます。

リスニングプログラム

補聴器ユーザーは、いつも同じ環境にいる訳ではありません。一日の中でも周囲の環境は変化しますし、日によっても異なります。騒がしい場所で友人とおしゃべりを楽しむ時もあれば、家で一人でじっくりと読書をする場合もあるでしょう。補聴器ユーザーが自分のいる環境に合わせて聞こえ方のプログラムを切り替えることのできる機能です。機種によって設定できるプログラム数は異なりますが、販売店と相談の上、ユーザーに合わせたプログラムを選択することができます。

データロギング

補聴器ユーザーの日常の音環境を補聴器が自動的に記録し、補聴器のフィッティング、調整に役立てる機能です。一日のうちでうるさい場所にいることが多いのか、静かな場所にいることが多いのか、その割合はどの程度なのか、といった情報が記録されるので、調整する際にはその情報を参考にしながら、よりユーザーの生活に合うように補聴器を調整することが可能になります。

リモコン

補聴器が高機能、多機能になるにつれて、その操作がわかりにくいという問題が起きてきました。また、補聴器はますます小型化しているので、操作が面倒、難しいという意見も増えてきました。リモコンがあれば、補聴器の音量調整やプログラムの切替を手元で簡単に行うことができるので便利です。

※機能の名称は、一般的なもので記載しています。メーカーによっては同等の機能でも異なる名称になっているものがあります。

※これらの機能は、器種によって搭載されていないものがあります。

最新補聴器のトレンド

これまで述べてきたように、最新のデジタル補聴器には、より言葉を聴き取りやすくするためや、より快適に聞こえるようにするために、さまざまな機能が搭載されてきます。そして、補聴器の技術開発は現在も進められており、従来になかった機能が登場してきています。

AI補聴器

最先端の補聴器は、ユーザーのいる環境を絶えず分析して、ユーザーの聴力も考慮しながら、瞬時にその場面で最適だと思われる音を届け続けることができるようになってきています。『ユーザーがどんなところにいても、何をしなくても快適によく聞こえる』という理想に、最近の補聴器は大きく近づいていると言うこともできるでしょう。
しかし、さまざまな機能を備えた最先端の補聴器でも、一人ひとり異なる聞こえ方の好みを自動で反映することはできません。同じ環境にいても、人によって好みの音や聞きたい音は違うからです。
そこで、使う人の聞こえ方の好みを反映させるために登場したのが、補聴器のAI機能です。例えばデンマークのワイデックス社が独自に開発した、AI機能のひとつ「サウンドセンス ラーン」は、ある環境において補聴器が提案してくれる二つの音から好みの方を選択していくだけで簡単にユーザーの好みの音をつくることができる機能です。また、もう一つのAI機能「サウンドセンス アダプト」は、ユーザーがどんな環境でどんな設定に切り替えているのかを補聴器が学習し、しばらく使っていくと、同じような環境ではユーザーがそのたびに同じ操作をしなくても補聴器が自動でユーザーの好みに合わせた音を届けてくれるようになっていきます。つまり、使えば使うほど聞きやすくなっていく機能です

スマートフォンとつながる

総務省が発表した平成30年度版情報通信白書によると、2017年における個人のスマートフォンの保有率は60.9%です。スマートフォンの普及に伴い、補聴器の技術や機能もスマートフォンと連携したものが増えてきました。
例えば、スマートフォンのアプリを使って、補聴器の音量調節や聞こえ方の切替などを行うことができる機能です。これまでは、補聴器の本体で操作するか、専用のリモコンを使って行っていたことが、スマホで簡単にできるようになります。
また、補聴器とスマホがつながり、電話の音声を直接補聴器で聞くことができるようになりました。補聴器のマイクを通さないクリアな音声が補聴器に届くので、快適な通話を楽しむことができます。また、スマートフォンで再生した音楽や動画の音声を補聴器で直接聞くことができるので、補聴器をワイヤレスイヤホンとして使うことができます。ランニングた移動中、いつでもどこでも音楽や動画をいい音で楽しむことができます。
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