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第2回:「見得(みえ)と附(つ)け」

第2回:「見得(みえ)と附(つ)け」

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附け1.JPG古典歌舞伎の舞台には、江戸の先人達があみ出した様々な工夫が凝らされています。中でも際立って目立つのは、「ツケ」の存在です。ツケ打ちと呼ばれる裏方さんが舞台上手(かみて)最前部に座り、板を二枚の木で叩き「ばたばた」と音を立てるのが「ツケ」です。

江戸の昔、歌舞伎は「見得」というポーズに「ツケ」と呼ばれる効果音を加える事で、今で言う「アップで見せる技術」を実践したのでした。足を大きくせり出し、手を引き上げる、首を大きくひねり目を剥くといった一連の動作の後、役者(達)のポーズがきまったところで「ばったり」とツケの音が劇場内の隅々まで響いた瞬間、お芝居はクライマックスを迎えます。

ツケが活躍するのは、登場人物が見得をする時だけではありません。花道を駆け抜ける足音にばたばたばたという音を添えたり、「大事な密書をうっかり落とす」といった場面には、小さく「ぱたっ」と鳴らし、お客様に「ここをお見逃し無く」と知らせもします。「立ち廻り」と呼ばれる、刀や十手を持ってのアクションシーンの間も、役者の動きに合わせてばたりばたりと音を鳴り響かせ、舞台上の緊張を高めます。

ツケのメカニズムは実に簡単です。両手に持った「ツケ木」で、床に置いた「ツケ板」を叩く。たったそれだけの事ですが、心地良いリズムとタイミングで音が入るとお芝居はぐっと引き締まり、舞台上の役者の気分も高揚します。同じ演技をしているつもりでも、役者の動きは毎日微妙に違いますから、ツケ打ちさんは全神経を集中して、役者と一心同体の意識でつとめます。時折音をたてるだけとはいえ、ツケ打ちさんも立派な演技者のひとりと呼ぶべきなのでしょう。

附け2.JPG附け3.JPG気分良くポーズをきめている様に見える役者達も、実はこうした効果音のおかげをもって、格好良く見せてもらっているのです。連載二回目の今回は、実際のツケ打ちの方をお招きし実演も併せて収録をおこないましたので、是非「みみから」サイトのプレイヤーで聴こえをお楽しみください。 

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